ウィトゲンシュタイン セレクション
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強靱な思考と生によって絶大な吸引力をもつ哲学者・ウィトゲンシュタイン。無数の断片が織り重なるそのテキストを、独自の切り口と一貫した姿勢で再構成した、名アンソロジー。
目次
1 言語と世界―『論理哲学論考』から
2 数学の基礎をめぐって
3 言語・行為・生活
4 「私的言語」批判
5 語られず示されるもの
ウィトゲンシュタインの著作の一部を和訳し、テーマ別に再構成したアンソロジーです。編者の黒田氏による説明は少なめで、ウィトゲンシュタインの文章を読者に直接日本語で読ませる入門書といったところでしょうか。取りこぼされたテーマはいくつかありますが、和訳と編集が非常に良質な本でした。
はじめに、ウィトゲンシュタインの思想と生涯が黒田氏によって簡潔に要約されています。要約のあとは、ほとんどウィトゲンシュタインの和訳の抜粋で構成されています。
「1・言語と世界」では、『論理哲学論考』の一部が抜粋されています。この章は、些細なところがギリギリまで省かれて50ページくらいに圧縮された『論理哲学論考』だといってよいです。もともと精密に構成されていた『論考』の要点がさらに抽出されてわかりやすくなっていて、この編集は凄いと思いました。
「2・数学の基礎をめぐって」は、数学論の抜粋です。この数学論は文系の私にもついていけましたし、過渡期(中期)思想を数学に着目して論じる切り口も斬新でした。
「4・『私的言語』批判」は、同じく後期思想の他者と共有できない感覚や私的言語などについての抜粋。
「5」で、ウィトゲンシュタインの生涯をかけたテーマが「語られずに示されるもの」であることが抜粋の羅列によって提示されています。